お客さまから預かった消費税、そのまま使っていませんか
ランチ 1,000 円に消費税 10% を加えた 1,100 円がレジに入る。この 100 円は「お店が預かっている税金」ですが、売上と一緒に口座へ入るため、つい運転資金として使ってしまいがちです。
年間売上が 1,000 万円を超えると、2 年後から消費税の課税事業者になります。個人事業の場合、確定申告と同じ翌年 3 月 31 日が納付期限です。1 年分をまとめて納めるため、準備していないと数十万円の支払いに慌てることになります。
たとえば年間売上 1,500 万円の飲食店で簡易課税(みなし仕入率 60%)を選んだ場合、ざっくりとした消費税の年間納税額は約 55 万円です。この金額を納付月にいきなり用意するのは負担が大きいので、月々の積立で備えるのが現実的です。
納税専用口座で「見える化」する
一番シンプルで効果がある方法は、納税用の口座を別に作ることです。売上が入る口座とは別に、毎月決まった金額を移しておくだけで、納税資金の確保がぐっと楽になります。
| 年間売上(税抜) | 簡易課税の概算納税額 | 月々の積立目安 |
|---|---|---|
| 800 万円 | 約 29 万円 | 約 2.4 万円 |
| 1,200 万円 | 約 44 万円 | 約 3.7 万円 |
| 1,800 万円 | 約 65 万円 | 約 5.5 万円 |
| 2,500 万円 | 約 91 万円 | 約 7.6 万円 |
※ 簡易課税・みなし仕入率 60%(飲食業第四種)で試算。テイクアウト比率が高い場合は軽減税率 8% の売上が増えるため、金額が変わります。
ポイントは「先に移す」こと。月末に余った分を移そうとすると、大抵は食材の仕入や人件費の支払いに回ってしまいます。売上入金の翌日に自動振替を設定するか、月初に手動で移す習慣をつけてください。
テイクアウトと店内飲食で税率が異なる点に注意
飲食店ならではの悩みが、テイクアウト(軽減税率 8%)と店内飲食(標準税率 10%)の混在です。たとえばディナーコース 5,000 円を店内で提供すれば消費税は 500 円ですが、同じ金額のオードブルセットをテイクアウトで販売すると消費税は約 370 円になります。
レジや会計ソフトで 8% と 10% の売上を正確に区分して記録しておかないと、申告時に集計し直す手間が発生します。日々の売上を税率別に記録する運用を早い段階で整えておくことが大切です。
簡易課税と原則課税、どちらが有利か
飲食店は FL 比率(Food=食材原価 + Labor=人件費)が売上の 60% 前後を占めるのが一般的です。このうち人件費には消費税がかかりません。そのため、原則課税で計算すると「仕入で払った消費税」が食材原価分に限られ、納税額が大きくなりがちです。
簡易課税では実際の仕入額に関係なく、売上にかかる消費税の 60%(第四種・飲食業)を仕入税額として差し引けます。人件費の割合が大きい飲食店では、簡易課税の方が納税額を抑えられるケースが多いです。
ただし、店舗の大規模リニューアルや厨房設備の入替えなど高額な設備投資をした年は、原則課税の方が有利になるケースもあります。設備投資の予定がある場合は、事前に税理士へ相談してください。
なお、簡易課税を選ぶには基準期間(前々年)の課税売上高が 5,000 万円以下であること、そして適用を受けたい年の前年末までに届出書を税務署に提出する必要があります。
2 割特例の終了と 2027 年以降の対応
インボイス制度の開始に合わせて導入された「2 割特例」は、個人事業主の場合 2026 年 12 月で終了します(フリーランス等を対象とした 3 割特例への延長措置はありますが、適用条件の確認が必要です)。
2 割特例を使っていた飲食店オーナーは、2027 年以降の課税方式を決めておく必要があります。簡易課税への切替を希望する場合、届出書の提出期限は 2026 年 12 月 31 日です。期限を過ぎると自動的に原則課税になるため、忘れずに手続きしてください。
当事務所のサポート
「自分の飲食店だと消費税はいくらになるのか」「簡易課税と原則課税のどちらが得か」といった疑問に、具体的な数字をもとにお答えします。納税専用口座の設定や届出書の提出時期まで、資金繰りの不安を減らすお手伝いをしています。テイクアウトと店内飲食の税率区分についても、レジの設定方法からご案内できます。消費税の申告が初めての方も、お気軽にご相談ください。
