届出先は大きく5つ
飲食店を開業するとき、届出や申請の提出先は保健所・税務署・消防署・警察署・労働基準監督署(+ハローワーク)の5か所です。「何を」「いつまでに」「どこへ」出すのかを開業前に整理しておくと、提出漏れによるトラブルを防げます。
まずは全体像を表で確認しておきましょう。
| 提出先 | 届出・申請の名称 | 提出期限の目安 |
|---|---|---|
| 保健所 | 飲食店営業許可申請 | 開業予定日の2〜3週間前 |
| 税務署 | 個人事業の開業届出書 | 開業日から1ヶ月以内 |
| 税務署 | 青色申告承認申請書 | 開業日から2ヶ月以内 |
| 税務署 | 給与支払事務所等の開設届出書 | スタッフを雇う日から1ヶ月以内 |
| 税務署 | 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 期限なし(早めが安心) |
| 消防署 | 防火対象物使用開始届出書 | 使用開始の7日前まで |
| 消防署 | 防火対象物工事等計画届出書 | 工事着工の7日前まで |
| 消防署 | 防火管理者選任届出書 | 収容人員30人以上の場合、営業開始前 |
| 警察署 | 深夜酒類提供飲食店営業開始届出書 | 営業開始の10日前まで |
| 労働基準監督署 | 保険関係成立届 | 雇用開始から10日以内 |
| 労働基準監督署 | 概算保険料申告書 | 保険関係成立から50日以内 |
| ハローワーク | 雇用保険適用事業所設置届 | 雇用開始から10日以内 |
ここから、提出先ごとに中身を見ていきます。
保健所 — 飲食店営業許可申請と立入検査
飲食店を営業するには、食品衛生法に基づく「飲食店営業許可」を保健所から取得する必要があります。営業許可がないとオープンできないため、保健所への申請はスケジュールの中でも優先度が高い手続きです。
流れはこうです。
- 内装工事に入る前に保健所へ事前相談(図面を持参する)
- 工事完了後、開業予定日の2〜3週間前に「飲食店営業許可申請」を提出
- 保健所の職員による立入検査を受ける(申請後1週間程度)
- 検査に合格すると営業許可証が交付され、営業開始
営業許可申請に添付する主な書類は以下のとおりです。
- 施設の構造設備の概要(平面図・配置図)
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者養成講習会の修了証など)
- 水質検査成績書(貯水槽使用水・井戸水を使う場合)
- 法人の場合は登記事項証明書
食品衛生責任者は、調理師・栄養士・製菓衛生師などの資格を持っている方はそのまま就任できます。これらの資格がない場合でも、各都道府県の食品衛生協会が実施する養成講習会(1日、受講料1万円程度)を受講すれば資格を取得できます。営業許可申請までに取得しておく必要があるので、早めに受講しておきましょう。
立入検査で確認されるポイントは、厨房の構造に関するものが中心です。具体的には、2層以上のシンク(食材用と食器洗浄用)、十分な換気設備、食品の温度管理ができる冷蔵・冷凍設備、防虫・防鼠設備(網戸や排水溝のトラップ等)、手洗い設備の設置場所と数、床や壁の清掃しやすい材質などが見られます。具体的な数値基準は自治体の条例によって異なるため、設計段階で管轄の保健所に相談しておくと、検査でやり直しになるリスクが減ります。
なお、検査手数料は自治体によって異なりますが、16,000〜19,000円程度が目安です。
税務署 — 開業届と青色申告の申請
税務署には最大4種類の届出・申請を提出します。
開業届(個人事業の開業届出書) は、開業日から1ヶ月以内に提出します。届出用紙は国税庁のサイトからダウンロードするか、税務署の窓口で入手できます。マイナンバーの記載が必要なので、マイナンバーカードか通知カードを用意してください。
青色申告承認申請書 は、開業初年度から青色申告の特典(最大65万円の控除)を受けるために出す書類です。提出期限は、1月16日以降に開業した場合は開業日から2ヶ月以内、1月1日〜1月15日に開業した場合はその年の3月15日です。開業届と一緒に出してしまうのが一番手間がかかりません。この書類を出さないと白色申告になり、65万円の控除が受けられないので、出し忘れると税金の差が大きくなります。
給与支払事務所等の開設届出書 は、スタッフを雇って給与を支払う場合に必要です。提出期限は給与を支払い始める日から1ヶ月以内です。1人で開業する場合は不要ですが、後からスタッフを雇うことになったら、その時点で提出してください。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 は、常時10人未満のスタッフを雇う飲食店であれば提出できます。通常は毎月納付する源泉所得税を、1〜6月分を7月10日に、7〜12月分を翌年1月20日に、年2回まとめて納付できるようになります。提出に期限はありませんが、給与支払事務所等の開設届出書と一緒に出しておくと楽です。
消防署 — 飲食店は火気使用が多いため特に重要
飲食店はガスコンロや揚げ物用のフライヤーなど火気を日常的に使用するため、消防署への届出は他の業種以上に重要です。
内装工事をする場合 は、着工の7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」を、店舗の使用を開始する7日前までに「防火対象物使用開始届出書」を提出します。居抜き物件で改装しない場合でも、使用開始届は必要です。
防火管理者の選任 は、収容人員が30人以上になる店舗で必要です。飲食店では客席数にスタッフの人数を加えた合計が収容人員になるため、30人以上に該当するケースは珍しくありません。該当する場合は「防火管理者選任届出書」を消防署に提出します。防火管理者の資格は、各地の消防署が実施する講習(甲種は2日間、乙種は1日間)を受講すれば取得できます。
また、厨房にはダクトや排気フードに消火設備の設置が求められる場合があります。こちらも事前に消防署へ相談しておくと手戻りを防げます。
警察署 — 深夜営業でお酒を出す場合
居酒屋やバーなど、深夜0時以降にお酒を主として提供する営業形態の場合は、警察署に「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を営業開始の10日前までに届け出る必要があります。届出先は店舗の所在地を管轄する警察署の生活安全課です。
届出に必要な書類は、営業の方法を記した書面、店舗の平面図・周辺の見取り図、メニュー表などです。客室の照明が20ルクス以下にならないこと、客室面積が9.5平米以上あること(客室が1室の場合を除く)など、構造上の基準もあるため、内装設計の段階で確認しておきましょう。
なお、ランチ営業がメインで深夜0時前に閉店する飲食店や、食事が主体でお酒は付随的に提供する程度の店舗であれば、この届出は不要です。
労働基準監督署・ハローワーク — スタッフを雇う場合
労働基準監督署・ハローワーク への届出は、スタッフを1人でも雇う場合に必要です。パートやアルバイトも対象になります。「保険関係成立届」を雇用開始から10日以内に、「概算保険料申告書」を保険関係が成立した日から50日以内に、それぞれ労働基準監督署に提出します。「雇用保険適用事業所設置届」はハローワークに雇用開始から10日以内に提出します。オープン日にスタッフがいる場合は前もって書類を準備しておくと安心です。
飲食店はアルバイトの入れ替わりが多い業種です。新しく人を雇うたびに「雇用保険被保険者資格取得届」の提出が必要になるので、採用のタイミングで手続きを忘れないようにしましょう。
当事務所のサポート
届出のなかでも税務署関連の書類は、出し忘れると青色申告の特典が受けられなかったり、源泉所得税の納付が毎月必要になったりと、後から取り戻せない影響が出ることがあります。当事務所では、開業届・青色申告承認申請書の作成から税務署への提出まで、開業時の届出手続きをまとめてサポートしています。「届出の期限がよく分からない」「保健所と税務署のどちらを先にすればいいか整理したい」といったご相談もお気軽にどうぞ。
