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飲食店開業から2年で黒字にするためにやるべきこと — 月次管理とFL比率の見直し

開業後2年で黒字にするのは現実的か

飲食店の開業後1年目は、ほとんどの店舗が赤字です。オープン直後は顧客がまだ定着しておらず、売上が安定しません。一方で、家賃・人件費・融資返済といった固定費は毎月かかります。

ただし、2年目に入ると状況は変わり始めます。1年間の営業で春夏秋冬を一巡し、繁忙期・閑散期のパターンが見えてきます。常連客も少しずつ増え、月商の見通しが立つようになります。ここで「なんとなく」ではなく数字を使った経営管理に切り替えられるかどうかが、黒字化できるかの分かれ目です。

目安として、席数15〜20席・スタッフ3〜4名の飲食店であれば、月商200万〜300万円を安定して出せれば黒字ラインに乗せることは十分に可能です。

まず損益分岐点を把握する

黒字化のスタートは、自分の店の損益分岐点を知ることです。損益分岐点とは、売上と費用がちょうどトントンになる金額のことで、これを超えた分が利益になります。

計算式はシンプルです。

損益分岐点 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

たとえば、毎月の固定費が100万円で、変動費率が35%だとすると、損益分岐点は約154万円になります。つまり月の売上が154万円を下回ると赤字、154万円を超えると黒字です。

飲食店の主な費用を固定費と変動費に分けると、以下のようになります。

費用の種類内訳の例売上に対する目安
食材原価(変動費)食材・飲料の仕入れ30〜35%
人件費給与・社会保険料・アルバイト代25〜30%
家賃テナント賃料・共益費10%以下が理想
広告費食べログ掲載料・SNS広告3〜5%
水道光熱費電気・ガス・水道5〜8%
その他通信費・消耗品・雑費3〜5%

飲食店経営で最も重要な指標のひとつがFL比率です。FはFood(食材原価)、LはLabor(人件費)の頭文字で、この2つを合計した数字が売上の60%以下に収まっているかどうかが健全経営の目安になります。食材原価率30%・人件費率28%であればFL比率は58%で合格ラインです。

この表を自分の店の実際の数字に当てはめてみてください。「うちは何円売り上げれば黒字になるのか」が見えるだけで、やるべきことの優先順位がはっきりします。

固定費を月1回見直す習慣をつける

開業時にかかった初期投資は変えられませんが、毎月の固定費は見直せます。特にチェックしたいのが以下の3つです。

  • 広告費: 集客媒体ごとの費用対効果を毎月チェックする。月5万円の掲載料で新規が5組しか来ないなら、1組あたりの獲得コストは1万円。リピート率が低い媒体なら、別の方法に予算を振り替えた方がいい
  • 食材原価: 仕入れ先の見直し、ロスの削減で30〜35%に収める。食材の廃棄が多くないか、仕込み量が適正かを確認する。メニューごとの原価率を把握し、高原価メニューと低原価メニューのバランスを取ることも大切
  • 人件費: スタッフの生産性(1人あたり月間売上)を把握する。目安はスタッフ1人あたり月50万〜70万円の売上。ピーク時間帯とアイドルタイムのシフト配分を見直すだけでも改善できることが多い

大事なのは、月に1回は試算表(損益計算書)を見る習慣をつけることです。年に1回の確定申告のときにまとめて数字を見ても、改善のタイミングを逃してしまいます。

客単価とリピート率を上げる

売上は「客数 × 客単価」で決まります。新規集客だけに頼ると広告費がかさむので、既存のお客さまの単価とリピート率を上げる方がコストは小さくて済みます。

客単価を上げるための具体的なアクションとしては、食事だけのお客さまにデザートやドリンクの追加を提案する、単品注文のお客さまにコース料理の魅力を伝えるなどがあります。飲食店の平均客単価は業態によって幅がありますが、居酒屋で3,000〜4,000円、カフェで1,000〜1,500円が目安です。サイドメニューやドリンクの組み合わせを工夫すれば、1人あたり500〜1,000円の上乗せは十分できます。

リピート率は、2回目の来店率が特に大事です。新規のお客さまが2回目に来てくれる割合が30%以下であれば、初回の料理やサービスに改善の余地があるかもしれません。目標は50%以上です。LINE公式アカウントでのクーポン配信やスタンプカードの導入など、再来店を促す仕組みを作ると、リピート率は上がりやすくなります。

税務面で手残りを増やす

売上を増やすだけでなく、税金や社会保険料の負担を正しくコントロールすることも手残り(実際に手元に残るお金)を増やすポイントです。

  • 青色申告特別控除: 開業届と青色申告承認申請書を出して複式簿記で記帳すれば、最大65万円の控除が受けられる(e-Taxでの申告が条件)。2025年分からは基礎控除も合計所得金額に応じて58万〜95万円に引き上げられたので、個人事業主には追い風
  • 減価償却の活用: 内装工事費や高額な厨房設備は一括で経費にできないが、耐用年数に応じて毎年少しずつ経費にできる。開業1〜2年目は減価償却費が大きいため、帳簿上は赤字でも手元にはお金が残るケースがある
  • 小規模企業共済: 毎月1,000〜70,000円を積み立てると、全額が所得控除の対象になる。将来の退職金がわりになるうえ、節税にもなる

確定申告を自分でやるにしても、まずは1年目だけでも税理士に帳簿のつけ方を教わっておくと、2年目以降の数字管理がぐっと楽になります。

当事務所のサポート

「毎月の数字を見ているけれど、どこを改善すればいいか分からない」「黒字のはずなのにお金が残らない」といったご相談をよくいただきます。当事務所では、飲食店の月次試算表をもとに、損益分岐点の計算・FL比率の改善・資金繰り表の作成までサポートしています。開業2年目に入って経理を整えたい方、確定申告だけでなく毎月の経営管理も相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。

飲食店の税務、一人で悩んでいませんか?

この記事を書いた人

小松 啓

小松 啓

公認会計士・税理士

大分県出身。監査法人・コンサルティング会社を経て独立。食べることが好きで、出張先でも地元の飲食店を巡るのが楽しみです。飲食店の経営は毎日が勝負。仕込みや営業に集中していただけるよう、帳簿まわりの面倒ごとは当事務所が引き受けます。

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